赤い慈雨

BACK GROUND作品の背景

蓮華の花を手に持った姿で描かれるこの菩薩のモチーフは古くは南インドのアジャンター石窟の壁画にも見られます。ネパールでは赤い体の蓮華手観音は雨を降らせる土着神のラトマチェンドラナートと同一視されています。雨季の始まる毎年６月頃に神像を乗せた山車がパタン市内をねり回るラトマチェンドラナートのお祭りは有名です。

POINT鑑賞ポイント

この作品は緻密な渦巻き模様で埋め尽くされた背景や原色に近い色使いなど古典ネワール様式で描かれています。中央に描かれている蓮華手観音の表情は寛大な威厳に満ちあふれ、木の葉やパターン化されたシダが緻密に描きこまれた光背とともに作品全体を重厚な印象にしています。それは古いネパールの寺院や宮殿に入ったときに感じる濃縮された暗さやそこからくる神聖さの感覚と似ています。

ABOUT ARTIST作者について

作者はお釈迦様の末裔のネワール族シャキャ出身のラビン・シャキャ。シャキャは代々仏像作りや彫金などを携わってきたカーストです。彼らの優れた技術がカトマンドゥ盆地の繊細で優雅な文化を支えてきました。